早期退職おじさんの日常

早期退職制度を利用して57歳で会社を辞めました。

職業訓練の選考会

職業訓練の選考会に行ってきた。

クリーニングに出していたスーツは間に合った。数年ぶりにスーツを着たが、ネクタイを締めるとどことなく気が引き締まる。少し緊張してきた。

髪もひさびさに整えて、鏡で見る姿とは裏腹に、ガッツリ就活生な気分だ。

僕の希望する「総務・実務コース」は20名の募集枠に対し40名超の応募があるのだが、指定時間の20分前に選考会場に到着したにもかかわらず、すでに半数程度の人が着席していた。ほとんどが僕よりずっと若い女性だ。みな就職面接用の黒っぽいスーツを着ていて、その中にポツンと入った僕はとても場違いな雰囲気が漂う。

係の人に案内され、40人が入るには少し手狭な机の間を「すんませんすんません」と手刀を振りながら指定の場所に着いた。

参加者が埋まったころに周りを見渡すと、僕と同年代らしき女性や男性も少数だがいる。安心した。

時間になり、最初の30分は選考会で行なう内容の説明のほか、以下のような諸注意と連絡を受けた。

  • これは職業訓練であり、就職する意思のある人が受講するべきものだからね
  • もし趣味や時間潰しのつもりで受けようとするならお門違い。なんなら今すぐ退出してもらって構わないよ
  • 今日は筆記テストが終わったら一人ずつ面接をするので、それが終わったら帰っていいよ
  • 一週間以内に合否通知を郵送するから、もし届いてなかったら連絡してね
  • 選考で受講が決まった人にはあらためて説明会を行なうから、合否通知と一緒に入ってる説明をよく読んでね
  • ちなみに受講途中で就職が決まって退所することは可能だよ

「趣味で受講する」の部分で僕のほうを見て話していたような気がしたが、気のせいだと思いたい。きっと過去に実際そういう感覚で受講しようとした人がいたのだろう。税金を使って職業訓練するのだから、趣味で受けられたりなんかしたら納税者としては迷惑な話だ。

最初の筆記テストは、いわゆる「適正テスト」と呼ばれるものだ。この日のために研ぎ澄ませてきた鉛筆が本領発揮する時がやってきた。

内容は、簡単な筆算や短文の誤字探し、展開図から組み立てた図形を選ぶなど、誰もが経験したことのあるものだと思う。時間との勝負なのにも関わらず慎重に進めすぎて、半分程度しか答えられないセクションもあった。

続いては面接だが、これはどうやら申し込みの先着順らしい。僕は最後から2番目だった。

一人あたり10分程度とのことで、複数の面接官が手分けをして同時に数人が面接できるよう工夫されていたが、順番が回ってくるころには2時間が過ぎていた。待ち時間が一番疲れたかもしれない。

軽い自己紹介と応募の動機、あとは面接官の質問に答えるという、多分よくある就職面接である。(こういうのは30年ぶりなので、自分の就活生時代のことは全く覚えていない。)

「早期退職して、今後は個人事業主として仕事をするつもりだが、ずっと技術畑にいたのでお金のことが全くわからない。だからここで勉強したいと思った」という、このブログで以前から書いているようなことを素直にそのまま話した。

面接官は、決して意地悪ではなくシンプルに疑問として「社会人経験が長いんだからお金のことはそれなりにわかっているのでは?」と問うてきたが、そこは「いいえ全く」と潔く答えた。あらまあという顔をされたが、面接官自体がお金のプロなので、いい歳したおっさんはみんなお金のことを勉強していると思い込んでいるのだろう。まあしょうがない。

ちなみに面接官は、自治体から教育を委託されているビジネス学校の講師である。晴れて受講となった場合に先生になる方々だ。

ここまでのやり取りで僕は気づいた。面接における合否の判断基準は、どうやら「受講後の一定期間の間に就職できる見込みがあるか」ということのようだ。委託業者ゆえ「就職率」という実績が今後の委託継続に関わってくるわけだ。おじさんはそういうところに勘が働くタイプなのだ。

実際僕が「個人事業主としてーー」と話したところで、あからさまにぱあぁっと目を輝かせて「確か個人事業主の届け出も就職実績に入りますよねっ」と面接官どうしがキャッキャと盛り上がっていたので大変わかりやすかったのだけれども。

終始なごやかに面接は進み、終わったころには5時の時報が聞こえてきた。

今日の調子だと僕は見込みありかもしれない。向こう一週間、ドキドキしながら毎日ポストを覗くことにする。