早期退職おじさんの日常

早期退職制度を利用して57歳で会社を辞めました。

幽霊と泥棒と祖父の新盆

お盆も過ぎ、みなさんの御先祖様も無事にあの世へお帰りになった頃かと思う。

実は、お盆に御先祖様が戻ってこられるのは、仏教の中でも浄土真宗以外の宗派だけだそうだ。浄土真宗の場合は、極楽浄土で仏になった人達はお盆だからといって一時帰省することはないという。だから浄土真宗の家庭では、お盆に迎え火や精霊馬などの盆飾りをすることがない。

 

さて、先日敷地300坪の実家の話をしたが、親に聞いたところでは、建てられたのは戦後間もなくのことだったそうだ。

母親が言うには、家が建つ前は墓地だったとかなんとか。母は他人から聞いた話を拡大解釈して吹聴するタイプなので信憑性は全くない。

それと関係あるのなかいのか分からないが、昔から家にはよく得体の知れないものが見えたり聞こえたりすることがあった。

たとえば、夜中に屋根の上で足音がするとか、すりガラスの向こうに白い影が移動するのが見えたりとか、暗い廊下の向こうに人が立っていたりとかそんな具合。うちは浄土真宗なので、少なくともそこにいるのは御先祖様ではない。

僕は幽霊肯定派でも否定派でもないので、自分が見たものに対して幽霊なのか生きた人間なのかは分からないけど何かがいる、程度にしか思っていない。どっちだったとしても自分に危害が及ばない限り放置なのだが、知らない人間に家に入られるくらいなら幽霊のほうがまだマシだと思っている。

一見お金持ちに見られるお屋敷なので、よく泥棒に入られるのだ。例えば昼間にこっそり入った泥棒が、使っていない部屋のどこかで息をひそめて夜になるのを待ち、みんなが寝静まったころに活動するという具合。

どう考えても幽霊がそこにいるよりずっと怖いだろう。

とはいうものの、前のスレッドで述べた通り、我が家は家が大きいだけで実際は貧乏なため、だいたいの泥棒は諦めて手ぶらでお帰りになる。泥棒が狙うような品物は、申し訳ないが祖父がとっくに金に替えて使い果たしている。

なお、使わない部屋に日常使うものや現金は置かないので、そういったものが盗まれることはない。

平成7年頃だったか、祖父亡きあとの新盆に、ほぼガラクタしか残っていない遺品を整理したのだが、掛け軸が何本かあった程度だった。しかしいずれも箱の中身はカラだ。これは泥棒の常套手段らしく、ひょっとしたら祖父ではなく本当に泥棒が盗っていったかもしれない。祖父なら桐箱ごと売り捌いていたはずだし、きっと大切にしていた掛け軸なんだろう。

あとは、令和の世なら骨董品扱いされるかもしれない8ミリカメラと映写機があり、フィルムも何本か残っていた。

家族で上映会を行なったところ、映っていたのはまだ幼かったころの僕たち兄弟と、祖父よりずっと早くに亡くなった祖母の優しい笑顔だった。これは泥棒には価値のないガラクタでも、僕たち家族にとってはとてつもない宝だ。

こればかりは祖父に感謝である。ちょっと泣いた。

屋敷が取り壊されたときはもう人手に渡ったあとだったので、家の中に残っていたのはゴミだけだったが、今思うとサルベージしておけばよかったと思うようなゴミもあった。親戚からもらった我が家周辺の古地図と、東海道新幹線開通前の時刻表である。父は時刻表専門の鉄道マニアだったので、昭和30年代の時刻表が物置(兼写真現像用暗室)部屋に山ほどあった。

どうして捨てずに取ってあったのかはわからないが、今なら小出しでヤフオクにでも流せばそれなりの値がついただろうし、泥棒に先見の明があれば盗られていてもおかしくなかったはずだ。惜しいことをした。今でも時々思い出してはため息をついている。

ちなみに昔見た得体の知れないものは、幽霊だったのか人間だったのか、もう解明のしようがないので未だに謎のままである。

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